バカノラとはメキシコのソノラ州原産でアガヴェパシフィカのみが使用された蒸留酒です。

バカノラはもちろん知っていて、飲んだことあったかな?というくらいの認識で、この程度の知識しかありませんでした。

 

今はジェイドックス株式会社の輸入事業部セールスマネージャーで、以前は六本木にあるアガヴェスピリッツの老舗バー”AGAVE”さんで10年間勤められ、メキシコにも何度も通いアガヴェスピリッツへの造詣も深い、鶴巻大地郎さんがSNSで書かれていたのを読ませていただいて、とても興味がわき、ちゃんと飲んでみたいなと思いました。

また皆さんにも知っていただきたいと思いブログにしました。

 

以下、鶴巻さんのSNSを引用させていただきます。

※ご本人の許可受領済み

 

4大アガベスピリッツの一つ「バカノラ」の生産地へ初訪問しました。

原産地指定はソノラ州のみ、指定品種はアガベアンゴスティフォリア・ハウ(一般名だとパシフィカですが地域によって他の呼び方もあるそう)のみと非常に限定的なアガベ酒です。

バカノラには悲しい歴史があります。

 

1915年に就任したソノラ州知事、後のメキシコ大統領 プルタルコ・エリアス・カジェスがバカノラの製造と販売を全面禁止にしました。彼は非常に厳格な人物で、特に酒と宗教に対して強硬な政策をとりました。(後にカトリック弾圧の「クリステロ戦争」も引き起こす)

違法化の理由は「社会の健全化」と「秩序維持」のためだったが、実際には酒の課税管理ができなかったことや、密造酒による健康被害を懸念していた、という側面もあります。

また、知事の父親が重度のアルコール依存症だった事も関係があるそう。

 

勿論バカノラ生産を生業にしている人がいる為、密造するようになるのは自然な事です。

バカノラの生産者(バカノレロ/Bacanorero)は、禁酒法の下で密造を続けましたが、見つかると逮捕・投獄 され、場合によっては 処刑されることもありました。

 

特にソノラ州山間部では、軍や警察による取り締まりが非常に厳しく、製造者が公開処刑されたという記録も残っています。(主に銃殺と絞殺)

このため、地元の人々の間で「バカノラ=危険な酒」という認識が広まり、飲む文化自体が衰退していきました。

 

1992年、ついにソノラ州政府は バカノラの製造・販売を再び合法化しました。

これによりバカノラは正式に市場へ戻ることができるようになりました。

 

その後2000年、メキシコ政府がバカノラに「原産地呼称(Denominación de Origen,)」を与えました。

これにより、バカノラは ソノラ州内の特定地域で生産されたものだけが「バカノラ」と名乗れることになりました。

 

また、原料は 「アガベ・アンゴスティフォリア・ハウ(Agave angustifolia Haw.)」のみ というルールも定められました。ただ、バカノラは今だに地元では一般的に飲まれません。

それは約80年もの間、違法だった影響でバカノラを飲む文化はほぼ消滅してしまったこと。

合法化された後も、生産量は少なく、認知度も低いこと。

かつての取り締まりの影響で、バカノラに対する「違法」「危険」といったネガティブなイメージが完全には払拭されていないこと等が所以とされます。

 

近年は特に、アメリカのバーテンダーやスピリッツ愛好家の間で注目されるようになり、輸出も少しずつ増えています。

ソノラ州の中でも、昔からのバカノレロ(生産者)が伝統的な手法で作る「アルテサナル(手作り)」なバカノラ が人気になってきています。

 

今回当社で日本に輸入販売しているブランド「SANTO CUVISO」 @santocuviso の生産地に行きましたが、やはり現地でしかわからないことがたくさんあり、非常に勉強になりました。

死と隣り合わせの中、製造を続けてきた生産者のおかげで今こうして日本でバカノラが飲める事。その歴史の重みを感じながら、一杯のバカノラを大切に味わいたいと思います。

 

鶴巻さんのこの文章を読んで、こんな悲しい歴史があり、テキーラやメスカルみたいに地元の方もあまり飲まれていない事を知りました。

テキーラが大好きな方でも『メスカルって何?』と聞かれることもあり、テキーラとメスカル以外のアガヴェスピリッツはソトルとライシージャだけでしたが、これを機に、バカノラもお店で飲んでいただけるようにしたと思います。

 

https://www.jdox-import.com/santocuvisobacanora